■ 中国銀行様
■ 背景
中国銀行は、岡山県内のトップ地銀。地域で利用率、ブランド認知率ともにナンバーワンを誇るものの、残念ながら当時2014年時点では、カードローンという商品に限ってはその認知は十分に行き届いてなく、利用率も決して高くない状況にあった。
■ 課題
ビモクリに与えられた課題は、「必要とされる方がご利用できるように、カードローンを知っていただくこと」。
■ 顧客の真の声を聴く
・カードローンという商品自体に他銀行と差はないというが、それは本当か?
・既存のパンフレットは、読む人が既にカードローンを知っている前提で作られていないか?
・そもそもカードローンとは何か? 利用者のメリットはどこにあるのか?
・中国銀行のカードローンを選んだお客様は、なぜそれを選んだのか?
・なぜ中国銀行は地域のトップを維持できているのか? 本当の理由は?
多くの企業は、往々にして顧客の声を聞くことを躊躇する。怖がって聞かない、もしくはアンケート程度のリサーチで聞いたつもりになっている。ビモクリがお手伝いしている企業も最初はそうした反応をすることがある。そして中国銀行は、「石橋を叩いても渡らない」と言われるほど、安全重視、いわば保守的な企業イメージを持たれている銀行である。
しかし中国銀行は、「お客様の本当の声を、直接聴いてみよう」と過去例のない決断をした。ここが最初のターニングポイントとなった。
■ マーケティング戦略の構築
全ての前提や思い込みを一旦白紙にして、カードローン事業に関わるキーマン7名の行員インタビューから仮説を構築。その上で、中国銀行の口座利用者、カードローン利用者、カードローン未利用者、さらに他行のカードローン利用者、合計50名以上をデプスインタビューし、仮説の検証と修正を行った。すると誰もが想像もしなかった新鮮な事実が次々と浮かび上がってきた。
ここで詳細は書けないが、とくに「誰に語りかけるか」の「誰」は、当初銀行が描いていた仮説を180度転換させるものだった。まさに、死角、思い込みの罠にはまるところであった。
こうして、「誰に」「何を」伝えればよいのか、そのマーケティング戦略を明確にした後、次に、日々カードローンの問合せに対して受け応えしている電話オペレーターのべ12名の、「表現仮説」に対する意見を求めた。細かい商品情報を「どう」、「どのような順番で」お伝えすればお客さまが理解しやすいか、具体的なクリエイティブの検証もこの段階で進めた。
■ コミュニケーション戦略の構築
お金の借り方を知らない人に、正しいお金の借り方を伝える方法が、パンフレットとCMだけでよいのか? その間を埋める方法を考えることが必要ではないか?
・知っていただく(CMやポスターなど)
↓
・興味を持っていただく(ビモクリで新媒体を開発)
↓
・理解していただく(パンフレットなど)
↓
・お問い合わせいただく(全ての媒体を通じて導線を設定)
広告の受け手の「情報に対する理解の差や受け取り方の違い」に応じて、届けるメッセージは異なるし、媒体の使い方も違ってくる。それぞれの段階でどのようなメッセージを、どのような媒体を通じて伝えていくのか。広告代理店が提案するCM中心のメディアプランとは全く異なる、緻密なコミュニケーションの全体設計図を我々は作成した。
<全体スケジュールイメージ>
結果、詳細な数字は出せないが、
・広告制作コストの大幅な削減(透明化)
・CMを見たお客様からの問合せ急増
・100店を超す支店長からプロモーション施策の支持獲得
・顧客の反応が変わったことで全行的な求心力が向上し、
その上で
・カードローンの申込者数増に繋げることができた。
また当初カードローンという商品の顔にしか過ぎなかった女性タレントは、CMを含めシリーズ化して起用され、現在は中国銀行全体のコミュニケーションの顔になっている。
<2014年オンエアし大評判となったカードローンCM>
「ご存知ですか編」
「メイキング編」
※広告代理店を通さずにビモクリが直接制作
※大幅なコスト削減を実現
※タレントもビモクリで選定·契約
※その後、CMは3年連続でシリーズ化して展開
■ お客さまに真摯に向き合い、お客さまの問題を解決する
繰り返すが、重要なのは、「誰に」、「何を」伝えるかであり、それを明らかにするのが「潜在価値開発」の手法なのである。結果的に制作したCMは大きな反響を得ることができ、申込者増の要因となった。
しかしキャンペーン成功の本当の理由は、単にCMが人気を博したからではない。全ては、中国銀行が顧客に真摯に向き合おうとしたところから始まった。
顧客の声を聴き、
①そこで改めてなぜ自身(中国銀行)が選ばれたか、選ばれていないかに気づいた。
③そして、課題と解決方法が明確になったことによって、中国銀行のプロジェクトチームが、しっかりと自分たちが行うことに確信を持つことができた。
確信が持てたということは、プロジェクトチームのメンバーが説得力を持って行内にコミュニケーションすることができたということである。だから、全行員が自信をもってお客様に商品を説明することができた。また逆に、多くのお客様がCMに対する好感を行員に伝え、そうしたプラスの反響が銀行のトップにまで届いた。結果的に、プロジェクトを皆で推進させよう、成功させようとする一体感が醸成された。
中国銀行営業企画部 M調査役
「今回の広告には根拠、核がありました。関わったメンバー全員がその核を共有できたことが大きいと思います。顧客の率直な声をリサーチし、仮説を検証し、そうしてマーケティング戦略を練り上げました。だからこそ、皆、やっていることに自信を持てたと思います。」
中国銀行総合企画部コストマネジメントセンター Oセンター長
「御社HPの『空飛ぶペンギンのマーケティング講座第14回』を拝見しました。題材に取り上げていただいてありがとうございます。関係者全員で共有しました。書かれている内容に基づいた活動を頑張りたいと考えています。弊社は『この銀行なら~してくれる、~できる』が信条です。それをお客様に訴え続け、実践し続けるだけだと思います。今回御社に戦略構築から制作までお世話になったTVCMでそれが伝えられると嬉しい限りです。 広告を担当した責任者が行内に「今回のTVCMでお客様に伝えたいメッセージ」やそれを踏まえて『銀行がどういう営業をしなくてはいけないのか』を周知してくれました。こうした行動に繋がったこと自体が、インナーブランディングの成果だと思います。 世の趨勢が金融業界を厳しい目で見ていることは確かですが、『し続けるだけ』だと思います。今後ともご指導·ご鞭撻の程よろしくお願い致します。」