潜 在 価 値 マ ー け テ ィ ン グ の プ ロ セ ス 化
「潜在価値開発」のステップを踏んで開発された「お宝」となる潜在価値情報で顧客に態度変容を起こさせ、行動変容につなげて成果を出すにはマーケティングプロセスに落とし込めなければならない。そのために必要なのが潜在価値マーケティングのプロセス化である。プロセス化を行うときの視点として必要なのが、顧客の変化をベースに考えるというものだ。顧客が対象顧客から継続顧客・紹介顧客などの優良顧客となるステップである。
このプロセスを部分的なものではなく、一連のプロセスとしてつくり上げ、プロセス全体をマネジメントすることが肝要である。従ってマーケティングプロセスとは、対象顧客を優良顧客に変化させる過程であるといえる。そしてビジネスの優位性をうまく表現化し、対象顧客に適切に伝達できる手段を使って、態度変容を起こし優良顧客への段階を踏んでいく活動である。
マーケティングとは、一方的なものではない。顧客との深いコミュニケーションによって、対象顧客の意識変化を起こさせなければならないものだ。どれだけ瞬間的に話題になったりバズが起こったとしても顧客の意識、態度に変化が起きなければ、コミュニケーションの失敗に終わったということである。そうした目に照らし合わせたとき、コミュニケーションの効果があり、顧客の意識変化を起こせることが証明されていくコンテンツ以外のものを使うことは意味がない。効果が証明されていないコンテンツをプロセス化しても決して成果は出ないからである。にもかかわらず、世の中には効果検証がなされていない表現コンテンツがはびこっているのが実情である。本書をここまで読んでいただいた方は、もうすでにお分かりいただけていると思う。
「潜在価値開発」によって、顧客がそれまで知らずにいて改めて知ったことで、顧客自身が重要なギャップ・インパクトを感じた「潜在価値情報」が探し出せれば、あとは正しくマーケティングプロセスに落とし込んで、その成果を得るだけだ。「潜在価値開発」理論では、マーケティングプロセスを「創客のメソッド」として次のようにメソッド化している。
創 客 の メ ソ ッ ド:優 良 顧 客 づ く り の 方 法( 顧 客 の12分 類 )
「潜在価値開発」における創客のメソッドとは、顧客を12分類に分け、その段階を変化させていくことによって、優良顧客化する一連のステップであり、それぞれのステップを詳細に規定している。
このように顧客の成長過程を詳細に規定し、それぞれのタッチポイント毎に適切な情報を出すことも、デジタルマーケティングの発達によってできるようになってきている。「潜在価値開発」もマスマーケティングの時代には、TVCMでも本来なら伝えるべき多くの情報量を圧縮するしかなく、多くの情報量を伝えるにはリアルな場面でのコミュニケーションを行うしかなかった。ヤクルトのようにリアルな販売組織をもっていないとできなかったことが、いまはデジタルマーケティングに落とし込んで実行することが可能になっているのである。
特に開発した潜在価値情報の使いどころは、反応顧客における顧客との信頼関係づくりをする「事前教育」と、購入顧客における関係性を深める「事後教育」の二つの場面である。ところが、この仕組みをつくらずにすぐ売り込むとことをしがちである。
世間的に有名ではないが成功しているインターネットマーケターは、この顧客との信頼関係づくりの事前教育の仕組みを強力につくっている。なぜなら大企業のような知名度がない、つまり信頼がまだないからである、そこで一から顧客教育をして信頼関係づくりをし、それができた段階で初めて商品を売る。決していきなり商品を売ることはない。そこで提供される情報は潜在価値開発の「階層のメソッド」の4つの階層の構造化されたストーリーと同じようなものである。本質は一緒なのである。
| 顧客の12段階 | マーケティングプロセスにおけるアクション | 管理指標・連動施策 |
|---|---|---|
| ①対象顧客 | ペルソナ設計、リサーチ(意識)、カスタマージャーニー設計 | 対象顧客数、DMP(行動データ) |
| ②アプローチ可能顧客 | リスト収集(自社リスト開発・他社リスト活用) | リスト数、オーディエンスデータ、流通データ |
| ③アプローチ顧客 | 情報開発、表現開発、媒体設計・開発、集客 | アプローチ数、潜在価値情報の表現コンテンツ化 |
| ④反応顧客 | 事前教育(潜在価値情報による深い信頼関係づくり) | 反応率、サイト訪問、サンプル・資料請求(MA) |
| ⑤試用購入顧客 | クロージング、試用評価・情報提供 | 試用購入率、オウンドメディア(MA) |
| ⑥購入顧客 | 商品評価・リサーチ、事後教育(関係性を深める情報提供) | 購入率、継続購入促進(CRM) |
| ⑦再購入顧客 | 事後教育の継続(商品情報・企業情報の深掘り提供) | 再購入率、離脱顧客のリスト化・復活施策 |
| ⑧継続購入顧客 | 問題探索リサーチ、クロスセル、優良顧客化 | 継続率、購入頻度、購入単価の最大化 |
| ⑨継続複合購入顧客 | コミュニティ化、自社と顧客の潜在価値の完全同期(優良顧客) | クロスセル率、購入単価、購入頻度 |
| ⑩紹介・口コミ顧客 | 紹介制度の設計、ファンイベント、情報の自発的拡散(優良顧客) | 紹介率、自発的ファン化の最大化 |
| ⑪離脱顧客 | 各フェーズからの離脱者のプールと分析 | 離脱率、再アプローチ(リターゲティング)対象 |
| ⑫復活顧客 | 離脱リストへの潜在価値情報による再アプローチ・再教育 | 復活率、再購入への引き上げ |
デ ジ タ ル マ ー け テ ィ ン グ 時 代 の マ ー け テ ィ ン グ プ ロ セ ス
皆さんの中でも関心が高いと思われるのが、「潜在価値開発」とデジタルマーケティングを組み込んだこれからの時代のマーケティングプロセスであろう。デジタルマーケティングによって、ビッグデータをDMPを用いて把握した、顧客のデジタル上の行動に沿ったカスタマージャーニーに対応したアプローチ設計が可能になった。
これらのデジタルマーケティング環境は「潜在価値開発」によってさらに有効に機能するのである。ご承知のように、①誰に、②どのような伝達手段で、という部分はデジタル時代に大きな進歩を遂げ、極端には何でもできるようになった。しかし、③なにを(表現コンテンツ)についての開発方法はマスマーケティング時代からほとんど変わっていない。ここに、「潜在価値開発」によって開発した潜在価値情報を組み込んでいく必要があるのである。
潜在価値情報は①問題の重要度を高め、②カテゴリーの優位性を高め、③コーポレートの信頼を高め、④プロダクトの優位性を高めるものであるから、マーケティングプロセスの各段階で顧客の意識構造を確固たるものにするアプローチとして、プロセス全体へ組み込む必要があるのである。
| 顧客化ステップ | デジタル環境の概要 | 潜在価値開発®の組み込み(深化) |
|---|---|---|
| 対象顧客 | ペルソナ設計、カスタマージャーニー設計、DMP(行動) | リサーチによる「顧客の無意識の盲点(潜在問題)」の抽出 |
| ②アプローチ可能顧客 | 自社リスト(オウンドメディア)、他社リスト(オーディエンスデータ) | 無意識を意識化するための「問い」の初期データベース構築 |
| ③アプローチ顧客 | 表現コンテンツ開発 ✕ メディア設計(ペイド、アーンド、オウンド) | 潜在価値情報 ➔ 表現コンテンツ化 |
| ④反応顧客 | サイト訪問、サンプル・資料請求、リターゲティング(MA) | 潜在価値情報による事前教育・信頼関係の100%構築 |
| ⑤試用購入顧客 | 試用評価・情報提供、オウンドメディア(MA) | 4戦略階層(問題・カテゴリー・企業・商品)のストーリー接続 |
| ⑥購入顧客 | 継続購入促進(CRM)、情報提供の仕組み化 | 潜在価値情報による事後教育・購入価値の「確信レベル」への引き上げ |
| ⑦継続顧客 | 深い関係づくり、コミュニティ化、ファンエンゲージメント | マインドもヘビーな「絶対の指名買い(唯一性)」の定着 |
「 潜 在 価 値 マ ー け テ ィ ン グ プ ラ ッ ッ ト フ ォ ー ム 」 の 考 え 方
私が開発した「潜在価値マーケティングプラットフォーム」とは、「潜在価値開発」した表現コンテンツを確実に顧客に届けるデジタルコミュニケーションプラットフォームである。そのための必要要件であり、独自性は3つある。
- 顧客を態度変容させる表現コンテンツ: 潜在価値開発による潜在価値情報(WHAT)
- 顧客に情報を深くインプットする方法: 質問型コミュニケーションシステム(対話システム)
- 対象顧客に確実にアプローチするメディア: 独自開発メディア
そして②の質問型コミュニケーションが対話のためのシステムである。質問することによって顧客の情報についての関与度を上げるのである。デジタルマーケティングの進化により、いまはリアル以上に有効な展開ができるようになってきた。ネットでのコミュニケーションが可能になり、「潜在価値開発」の活用の幅は大きく広がっている。逆に言えばデジタルマーケティングの場にこそ「潜在価値開発」が必要なのである。
重ねて述べるが、デジタルツールの活用が目的なのではない。まず、顧客の心を動かし態度変容させるような情報開発、表現開発、コンテンツ開発なしにはいくらデジタルツールを活用しても十分な効果は決して得られないことはいうまでもない。
「 潜 在 価 値 マ ー け テ ィ ン グ 」 に 必 要 な 時 間 と は
「潜在価値開発」プロジェクトを実施して走らせるにはどれくらいの時間が必要なのか。これもよく聞かれることだが、だいたい2〜3カ月必要となる。ただし、社員インタビューの人選やノンユーザーリサーチの対象者リクルートなどにどれくらい時間がかかるかによっても全体の時間は左右される。またリサーチの詳細を議事録化して処理する作業も、今後AIを活用することでさらに短縮できるのではないかと見込んでいる。
「潜在価値開発」ではブラッシュアップ化の過程を経て仮説検証を行い、最終的にもっとも顧客にインパクトのある情報をステートメント化し表現開発する。この時間も、一見、手間がかかりすぎているように思えて、実は一度ベースになる情報開発ができれば、以後はその情報を活用して効果的なマーケティングが行えるのでトータルで見た場合にはかなりの効率化になる。それを行わずに新たなマーケティングプロセスを走らせるたびに、手探りで行って時間や労力を無駄にする必要がないというわけだ。
自 分 の こ と は 誰 も う ま く 伝 え ら れ な い
デジタルマーケティングプロセスそのものではなく、いかに自分たちの潜在価値を開発して伝えるかという点に尽きる。私たちも自分たちのことが100%うまく伝えられているかと自問すると、まだまだだと思う。かならずクエスチュンはつく。だが、それがある意味で正しい姿なのである。なぜなら「自分たちは自分たちのことを分かっていない」「まだまだ自分たちのことをうまく伝えられていない」という事実を「分かっている」ことが重要だからだ。
ここを「自分のことは分かっている」「自分たちの伝えるべき価値もすでに充分ある」と思い込んで一方的なマーケティングコミュニケーションを最新のデジタルマーケティング環境で行っても、消費者、ユーザーとのズレは永遠に解消されない。同じことを伝えるのであっても、顧客を深く知るコミュニケーションとリサーチによって、伝え方を変えたり、顧客の潜在問題を開発したりすることで、それまでまったく顧客にインパクトを与えなかったものが激変する可能性を秘めている。そこが「潜在価値開発」の魅力であり同時に奥深く、形式的な従来の戦略フレームとは異なるものなのである。