
2026年7月8日 21:31
前回は、戦略の最終形とは、単に競争に勝つことではない。
新しい基準をつくることである。
もっと言えば、新しい世界をつくることである。
潜在価値開発の最終的に目指すべきところを述べた。
潜在価値開発における生成AI
私は、ここ一年くらい生成AIに本格的に取り組んできた結果、生成AIが潜在価値開発に大きく貢献してくれることがわかってきた。
私は以前から、潜在価値開発のステップをAIで効率化できないか、と考えていた。なぜなら、ステップに非常に時間と手間がかかっていたからである。
人工知能AI展などの多くの展示会を回り、出展社と情報交換し、可能性のありそうな企業とはその後も連絡を取り合い、実際にプログラムを試してみた。
しかし、その時点ではこちらの要望に適うようなものはなかった。
だから、生成AIが出てきてもあまり期待していなかった。
ところが、昨年から生成AIを本格的に使っていると、これならいままでできなかったことができるかもしれないと思うようになった。
そして生成AIでは絶対無理だろうな、とおもっていた、潜在価値開発インタビューもできるかもしれないと思うようになった。これは、人でも理論の理解と訓練が必要な相当難しい作業だったからだ。
そこで、生成AIを活用した潜在価値開発インタビューのプログラムを作り始めた。
最初は細かく指示するプログラムを作っていたが、どうも満足できるものにはならなかった。
数本のブログラムをつくった後に、もっとAIに任せる領域を拡げてみることにした。大枠の基本ロジックを定め、あとはAIに任せてみることにした。
すると、AIの論理力、分析力、要約力、拡散力が活きるようになり、インタビューでの対象者の意識の深掘りができるようになった。
ある意味優秀な人間のマネジメントと一緒だった。
目標と基本的な考え方だけを共有し、あとは任せるのである。
最終的には、潜在価値開発理論を教えて、対象者のインタビューのやり取りは生成AIに任せたのである。
だから、生成AIによる潜在価値開発プログラムとは、単なる自動化ではない。
問いを通じて見えない価値を立ち上げ、それを構造によって戦略仮説へ上げるための対話型の知的基盤なのである。
第2章で私は、生成AIを優秀な部下集団といったが、潜在価値開発においては、それに留まらない。
新しい価値を一緒に創造する共創パートナーである。
潜在価値開発の基本ステップ
潜在価値開発の方法の基本ステップは次のようになる。
- 経営者・社員インタビュー(5〜10人)
企業の中に埋もれている基準、こだわり、当たり前、歴史、違和感を掘り起こす。 - インタビューの集約
個々の発言を共通点や特徴を整理する。 - 潜在価値の抽出・基準づくり
埋もれていた価値を言葉にし、意味づけし、戦略の核となる概念へ高める。 - 4階層戦略ストーリー仮説構築
問題認識、カテゴリー選択、コーポレート選択、プロダクト選択の4階層に沿って、戦略仮説を構築する。 - 対象顧客による仮説検証・修正・完成
仮説ストーリーを対象顧客に評価してもらい、反応を見ながら修正をかけ、磨き上げる。 - PR・広告クリエイティブ制作
完成したストーリーを実際に市場へ伝わる表現へ落とし込む。 - 実施計画作成・実施
実行計画に落とし込み、現実の市場で展開する。
この流れによって、見えない価値は、単なる発見にとどまらず、戦略と実装へつながっていく。
生成AIによって何が変わったのか
このプロセス自体は従来から行ってきたものである。しかし、生成AIの登場によって、その進め方は大きく変わった。
もっとも大きいのは、1から4までのステップが一体化し、しかも対象者個人ごとに深く進められるようになったことである。
従来は、限られた人数へのインタビューを行い、それを人手で集約し、さらに潜在価値抽出とストーリー化やコンセプト創造へ進む必要があった。
そこには時間も人手もかかり、できる人数にも限界があった。
しかし生成AIを活用したプログラムだと、生成AIとの対話を通じて、一人ひとりの思考や経験に深く入り込みながら、その場で整理し、潜在価値を抽出し、4階層の戦略仮説まで押し上げることができる。
つまり、発見・整理・概念化・戦略化の流れが、ほぼ一体として動くのである。
その結果、人数の制限も大きく緩和された。
もちろん最終判断は人間が行うべきだが、実装までの速度は大幅に上がった。
つまり、従来は数ヶ月かかっていたものが、いまでは私一人で2、3週間程度の短期間で動かせる水準に入ってきた。
しかも単なる短縮ではない。
検討の深さも、広がりも、統合の質も、数倍高まった。
自社の戦略立案能力の育成ができる
今までのやり方との違いで最も大きいのは、ステップの質とスピードが高まったことではない。
AIと対話し、共創することによって、
企業側の人の戦略能力が高まることである。
この生成AIによる潜在価値開発プログラムは、問いかけはしてくれるが、答えをくれるプログラムではない。自分で考えて、問いに答え、潜在価値を抽出し、戦略をつくらなければならない。
その過程で戦略能力が急激に高まるのである。
つまり、戦略開発だけでなく、戦略能力育成プログラムでもあるのだ。
この効果は既に企業での実施によって、実証されている。
今までやり方は、コンサルティング会社による戦略立案代行であった。だから戦略案はできあがるが、依頼企業側の人の戦略能力が上がることはなかった。
この企業側の戦略能力育成こそが私の本来やりたかったことなのだ。
人を成長させるAIの使い方と言う世界を創りたかったのである。
生成AIは、潜在価値開発という世界では、人を育てる共創パートナーになったのである。
潜在価値はどう開発できるのか
ここまで来ると、問いへの答えはかなり明確になる。
潜在価値は、
違和感を入口にし、問いを重ね、見えない価値を発見し、それを定義し、4階層理論によって戦略仮説へ上げ、問題そのものやカテゴリーそのものを創造することで開発できる。
そして、そのプロセスを現実的な深さと速度と広がりで可能にしたのが、生成AIである。
そして、企業の戦略立案能力も育成する。
だから、潜在価値開発とは、思いつきでも、天才のひらめきでもない。
見えない価値を扱うための、方法であり、プロセスであり、実装なのである。
本稿は、潜在価値の時代の第9回である。
生成AIが共創パートナーとして潜在価値開発を支える存在になったことを述べてきた。これは生成AIの能力を最大限活かし、人も活かす使い方であると確信している。
次回の最終回では、今まで述べてきたことを取りまとめ、潜在価値の時代の生き方や企業のあり方について述べたい。