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『潜在価値マーケティング』表紙データ

『潜在価値マーケティング』

平野淳 著(幻冬舎メディアコンサルティング刊)

<本書「目次」より>

目次
はじめに
  • なぜデジタルマーケティングで満足な成果が得られないのか
  • コミュニケーションの本質を探索する時代へ
  • これからのビジネスの根本となる「潜在価値マーケティング」
  • マーケティングサイエンスの先を開発
  • 「潜在価値マーケティング」で「罠」から抜け出す
第1章 マスマーケティング、消費者インサイト論……
既存のあらゆる理論をしのぐ、新マーケティング理論の登場
  • 「潜在価値マーケティング」が乗り越えようとするもの
  • デジタルマーケティングを超えて
  • マスマーケティングへのアンチテーゼ
  • 競争戦略と消費者インサイト論を超えて
  • 消費者意識構造のゴール
  • AI時代のマーケティング
  • 「潜在価値開発」はとはなにか
第2章 9割の企業が見落としているマーケティングの死角
  • 自らが陥っている罠に気づく
  • 俯瞰のメソッド ビジネス成功の12条件
  • 最も難しく危険な罠とはなにか
  • 「マーケティングとはなにか」を明確にする
  • 死角のメソッド 陥りがちな「12項目の罠」
  • 広告主と広告代理店の役割分担
  • メーカーは商品開発に逃げる
  • 情報開発とクリエイティブ開発の罠
第3章 見えないものを見る―
  • 企業自身も気づいていない自社の魅力を訴求する「潜在価値マーケティング」とは
  • 「潜在価値開発」とはなにか
  • 「潜在価値開発」の目的
  • 「潜在価値開発」の戦略的特徴とは
  • 新たな3つの戦略目標
  • 購入継続の条件と階層のメソッドの関係性
  • 新しい戦略コンセプトの創造 =「潜在価値」
  • 企業の価値は潜在化する
  • なぜ潜在価値に気づかないのか
  • 考え方そのものから差別化する
  • 戦略フレームと11の戦略領域
  • 差別的優位性の新しい定義=唯一性を実現する
  • 「生産の発想」という潜在価値
  • 組織原理という潜在価値
  • 潜在価値開発の領域 問題×解決策マトリックス
  • 既存戦略領域② 目に見える顕在問題
  • 新戦略領域②③ 問題に対する深い洞察と新しいコンセプトメイキング
  • 新戦略領域② 潜在問題の発見
  • 提供価値の本質を追求する
  • 新しい定義をする
  • 新カテゴリーをつくる
  • 新戦略領域⑤ 問題は創造できる
  • 基準をつくれば、問題が発生する
  • 新しい目標や夢をつくる
  • 新しい世界をつくる
  • 新戦略領域④「超非合理」真似したくないことをする
  • 既存戦略領域③「超常識」できないと思っていることをする
  • 新戦略領域⑤⑥⑦⑧ 高レベルの唯一性の構築
  • 戦略のメソッド 戦略フレームに基づいた戦略領域の優先順位
第4章 企業の「潜在価値」を開発し、ユーザーに分かりやすく伝える7ステップ
  • ビジネス理論が情報収集の質を決める
  • 「潜在価値開発」理論に基づく情報収集
  • 〈潜在価値開発の7ステップ〉 開発のメソッド
  • 社員研修から始める
  • 社員インタビューの重要性
  • 「潜在価値の仮説ステートメント(文章)」開発
  • 仮説の検証(ノンユーザーリサーチ)
  • 探索のメソッド―潜在価値開発リサーチのポイント
  • ステートメントをブラッシュアップする
  • ストーリー構造化された表現コンテンツ
第5章 「潜在価値」でユーザーを惹きつけ、優良顧客にするマーケティングプロセス
  • 潜在価値マーケティングのプロセス化
  • 創客のメソッド 優良顧客づくりの方法(顧客の12段階)
  • デジタルマーケティング時代のマーティングプロセス
  • 「潜在価値マーケティングプラットフォーム」の考え方
  • 「潜在価値マーケティング」に必要な時間とは
  • 自分のことは誰もうまく伝えられない
第6章 「潜在価値マーケティング」が企業に革命を起こした!「潜在価値開発」実践事例
  • 「潜在価値開発」実践事例 1(情報開発) ヤクルト本社「ヤクルト400」
  • 「潜在価値開発」実践事例 2(イメージストック開発) ヤクルト本社「ヤクルト・ジョア」
  • 「潜在価値開発」実践事例 3(戦略立案から実行まで一気通貫で支援) 中国銀行「カードローン」
  • 「潜在価値開発」実践事例 4(社風を表現化する)アルテリア・ネットワークス
  • 「潜在価値開発」実践事例 5(真のヘビーユーザーづくりを目指す) カゴメ「野菜一日これ一本」

おわりに

<本書「はじめに」より>

はじめに
なぜデジタルマーケティングで満足な成果が得られないのか

広告やマーケティングの世界はインターネットの登場によって大きく様変わりした。
かつてはマスメディアによるマーケティングが主流であったが、今ではインターネット中心の施策へ移行している。
実際、インターネット広告費は1兆5000億円(「2017年日本の広告費」電通調査)を超え、テレビメディア広告費に迫る時代となった。
また、スマートフォンが普及し、消費者、ユーザーの生活行動が変化したことに呼応して、多くの企業でデジタルマーケティングのためのさまざまなツールも取り入れられるようになった。だが、その成果に企業たちが満足できているかというと疑問が残る。
なぜならデジタルの黎明期とは違って、インターネット広告の新手法やデジタルマーケティングの最新ツールを導入しても、それだけでアドバンテージが得られる時代は終わったからだ。

私たちが2018年3月に日本マーケティング協会と協力して行った、デジタルマーケティングセミナーでのアンケート結果でもリアルな声が浮かび上がった。参加したのは日本を代表する優良企業が多く、各社ともデジタルマーケティングに積極的に取り組んでいるものの、やはり「多少の成果は出ているが、満足なものではない」という回答が最も多かったのである。

いったいなぜ、最新手法や最新ツールを取り入れているのに、その成果を十分に享受できないのだろうか。

コミュニケーションの本質を探索する時代へ

デジタルマーケティングを取り巻く課題を探る前に衝撃的なことをお伝えしなければならない。

今後もAI(人工知能)などを活用したデジタルマーケティングの進化はさらにスピードを増していくが、それらをキャッチアップし続けても、デジタルマーケティング投資に見合った成果を享受するのは難しいということだ。

そもそもデジタルに限らずアナログの時代からマーケティングコミュニケーションの本質は変わっていない。「なにを」「どういう手段で」伝えるかという原点に立ち返れば、いくら手段を新しくしても、肝心の「なにを」がズレると、消費者、ユーザーとのコミュニケーションがうまくいくはずはないのである。これはBtoCでもBtoBでも同じだ。

まずは、この最初のボタンの掛け違いに気づかなければならない。

ここ十数年、マーケティングの世界では新しいツール(手段)に目を奪われ「なにを」が相対的に軽んじられてきた。だが、もはやインターネットもスマホなどのデバイスも当たり前になり、その目新しさは失われ、消費者やユーザーの惹きつけるものでもなくなった。

つまりツール活用以前に本当の意味で消費者、ユーザーの興味関心を惹起し、態度変容させるマーケティングコミュニケーション上の有益な表現開発が求められているのだ。

しかも、その表現開発は従来型の4マス媒体(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)中心の時代とは異なってくる。テレビの15秒スポットのような少ない情報量でいかに目立つかというものではなく、多様化した情報チャネルの中で消費者やユーザーと深くコミュニケーションできる表現開発が必要になってくるのである。

デジタルマーケティング時代になったことで、マーケティング施策の高速PDCAが回せるようにはなった。だが、そこで明らかになったのは、すでに顕在化している価値(価格優位性や新機能、バリエーション性など)をコミュニケーションの中心に据えても、それほど効果はないということ。つまり手詰まりなのである。

既存の価値では消費者、ユーザーの態度変容は起きない。だからこそ、今までにないもの、埋もれてしまっているもの、見過ごされているものを探索しなければならない。そこで根本的な問題解決の鍵となるのが、本書で取り上げる『潜在価値開発®』である。

消費者、ユーザーのみならず価値提供する側の企業も気づいていない「潜在価値」を認識して掘り起こし、最適な表現開発をすることでしか、デジタルマーケティングの見えない壁を越えることはできないのだ。

これからのビジネスの根本となる「潜在価値マーケティング」

このようにマーケティングを取り巻く状況が大きく変容しているにもかかわらず、相変わらず従来型のマスマーケティング時代の考え方、発想から脱却できていない企業、広告代理店は少なくない。

SNSを使ったバズマーケティングといった手法も一見新しいように思えるが、広く拡散させて自然な歩留まりに任せるしかない点でマスマーケティング発想と根本は変わらないものだ。しかも自分たちの魅力や優位性を伝えているつもりでも、ほとんどが発信側の一方的な思い込みから抜け出ていない。

現在、私は「本当に世の中の役に立つ新しいビジネス理論やモデル」を提供できるチームとして株式会社ビモクリを立ち上げ、さまざまな顧客企業のコンサルティングに携わっているが、その現場でもマーケティングギャップには想像以上のものがある。

社員の声、顧客、ユーザーの声を深く綿密に拾っていくと、企業側の認識と顧客、ユーザーの認識に鮮明な断層が現れ、愕然とすることが多々あるのだ。

自分たちは特に価値があると思わないこと、当たり前すぎて改めて訴求するほどでもないと「思い込んでいる」あるいは「気にも留めていない」ものに、むしろ顧客やユーザーが魅力を感じ態度変容にもつながる本当のお宝(差別的優位性)があることを発見し、企業は衝撃を受けるのである。

こうした事態が起こるのは人間の本性のためであり、誰が悪いのでもない。人は他人のことは客観的に見られても、自分を客観的に見るのは難しいものだからだ。

企業も人の集団で動き、形つくられている以上、人間と同じ現象が生じる。真面目な努力を長年続けている企業ほど、自分たちのやっていることは当たり前で大したことではないと思いがちだ。

つぎつぎとイノベーションを起こし、新商品や新たなサービスを展開している企業でも、顧客やユーザーは「新商品、新サービス」に魅力を感じていると思い込み、実は創業理念や経営者の哲学に共感してくれていることに気づかなかったりする。

いずれの場合でも、本来、きちんと表現開発して伝えるべきことをマーケティングの中に組み込まず、ズレたところでマーケティング施策を行っても一時的な効果しか生まれないため投資効果は限られる。

人口減少時代の今、マーケティングが担うべきは、一時的に動員した顧客がしだいに離れていくのを指をくわえて見ていることではなく、自分たちの「潜在価値」を認識して表現開発し、他には目もくれずに自社のファンとなってくれる本当のヘビーユーザーを獲得することだろう。

マーケティングサイエンスの先を開発

私が従来型のマスマーケティングに疑問を抱き、マーケティング革新の必要性を感じたのは前職のヤクルト時代のことだ。

私は1981年に株式会社ヤクルト本社に入社以来、一貫してマーケティング・広告畑を歩んできた。1991年には缶コーヒーのブランド担当として、「とんねるず」を起用したCMによって1年で売上げを倍増させ、以降、マーケターとして、トクホ健康茶「蕃爽麗茶」の圧倒的トップシェア獲得や「ヤクルト黒酢ドリンク」の黒酢市場トップシェア獲得、一時大きく低迷したヤクルトブランドを10本パック導入というインストアマーチャンダイジング的手法によって復活させるといった成果をあげてきた。

このようにマスマーケティング的な手法で成果を上げてきたわけであるが、その手法を突き詰めれば詰めるほど逆に限界を感じるようになったのである。

マスマーケティング的手法の限界についてはこの後詳細に述べるが、そうした中で私が自ら構築したのが、潜在価値を再認識し、顧客に伝える「潜在価値マーケティング」である。

2010年には広告部長に就任し、「ジョア」のブランド広告で飲料部門CM好感度1位を獲得した。これらの実績も、偶然そうなったのではなく、「潜在価値開発」によるきちんとした〝計算〞によって、なるべくしてなったものである。

そもそもヤクルト本社時代の1989年、マーケティング部の創設に伴い、当時最先端であったMIT流のマーケティングサイエンス理論を学んでベースにしたのだが、理論の
限界も感じざるを得なかった。

なぜならデータサイエンスは事後の結果に関しては多方面から細密に分析できるが、そうした結果の前提となった〝仮説〞に関しては、結局、人の経験や勘から導き出すという域を出なかったからである。

マーケティングにおいて仮説こそ重要なのはいうまでもない。これを伝えたらユーザーの意識がこう変化し、行動がこう変わる。その仮説形成を正しくロジカルに行うために構築したのが「潜在価値開発」である。前述したヤクルト時代の仕事においてその革新的な効果を実感し、行き詰まり状態にある世の中のビジネスを激変させるため新たな会社ビモクリを立ち上げたのだ。

「潜在価値開発」の理論では、企業自身も認識していなかったその企業独自の「価値」を引き出し、表現開発して伝えることで顧客、ユーザーの心を動かし、行動までも変えることができる。競争優位性をめぐって競合としのぎを削る必要もなく、「潜在価値」がもたらす「差別的優位性」「唯一性」によって圧倒的に勝つことができるのである。

私は現在、この「潜在価値開発」をデジタル化したインターネットプラットフォームである「潜在価値マーケティングプラットフォーム」を開発し、マーケティング戦略立案から実行までを一気通貫でサポートできるようになり、顧客をより確実に成功に導いている。

「潜在価値マーケティング」で「罠」から抜け出す

本書を手に取っていただいた方々の中には、企業のマーケティング担当者、ブランドマネージャー、広告宣伝担当者、ユーザーコミュニケーション担当者、あるいはコンサルティングで顧客の事業にマーケティング上の問題解決を必要としている方なども多いと思われる。

そうした方々に、一言でいうならば企業が陥りがちな「思い込みの罠」から抜け出し、「潜在価値マーケティング」によって差別的優位性を手にするまでの理論と具体的ステップをお伝えするのが本書の目的だ。

デジタルマーケティングを導入しているが、成果に満足していないという人、マーケティングの次の展開に思い悩んでいる人、デジタルとリアルの融合のヒントが欲しいという人にも本書は役立つことだろう。

従来のやり方では、企業側からの目線で顧客ベネフィットではない「商品やサービスの機能」を語ったり、いかにも顧客やユーザーのことは分かっていますという「それらしい表現」でバランスよく自社のことを伝えるマーケティングをしてきたが、その成果には満足できていないというケースも多い。

あるいは広告代理店やコンサルファームなどのプロに任せきりで自分たちは管理しかしておらず、本当に効果のあるマーケティングを求められても、なにが問題でなにをどうすればいいのか分からないという声も聞く。その場合でも、本書でなにをすればいいのかをつかんでいただけるようにしたい。

なにより、デジタルマーケティングやマーケティングオートメーションといった新しいフレームとさまざまな指標に追い立てられ、肝心の「自分たちの本当の強み=潜在価値」を見つけられずに日々の業務に疲弊している人の味方になれるはずだ。

人間も企業も自らの本質的魅力に「無自覚」であることは、人生を生きる上でも企業活動を行う上でも足をすくわれる「罠」となる。まずは見えない「罠」とは何かを自覚し、「潜在価値マーケティング」によって「罠」から抜け出し、ビジネスを成功に導いていくことが肝要だ。

そのための強力なエンジンに本書がなれれば、それに勝る喜びはない。