週刊 企業と広告 誌上マーケティング講座

広告会社の役割とは

2014.11.06
「空飛ぶペンギン」のマーケティング講座
第11回

広告会社になってしまいました。

 

 今週は前回の続きで差別的優位性の創り方のお話をしようと思っていましたが、ビモクリの活動の中でちょっとしたトピックがありましたので、今回はそれを題材にお話させていただきたいと思います。

 

 半年ほど前からマーケティングのコンサルティングに入っている企業から、ある商品の広告制作のすべてを依頼されてしまいました。その顛末をお話します。(自慢話?)

 われわれは社員のインタビューから始めて、ユーザーリサーチ・ノンユーザーリサーチと情報収集をすすめ、その企業が思いもよらない顧客の真実を発見しました。そして、その真実に基づいて、今までのその企業の常識を180度覆すようなマーケティング戦略を提案しました。それは衝撃的に受け止められ、提案した方向性で今後のマーケティング戦略をすすめることになったわけです。

 

 その中で、新たにビモクリが提案したコミュニケーションツールがあり、それだけはわれわれが制作のお手伝いをしましょうというのが最初の話でした。ところが、その後話をすすめていくうちに、その企業から、「すべてのコミュニケーションを連動してやりたいから、TV・新聞広告・ラジオ・パンフレット等すべての広告媒体・資材の制作をどうしてもお願いしたい」ということになりました。

 ビモクリは媒体のバイイング機能はありませんが、制作であれば私と共同代表をしている者が広告会社の出身で、制作会社の社長もやったキャリアがあるので、そのネットワークを活用した広告制作が可能なのです。われわれはこれを売り物にしようとしていたわけではまったくないのですがね。なぜこんな自慢話めいたことをするかというと、この事例が広告業界の今の課題を象徴しているからです。

 

本当の広告会社の役割とは

 

 これまでも何度かお話しているように、広告業界の皆様は本当に顧客のマーケティング課題、もっと言えばビジネスの課題に向かい合っているのでしょうか。そしてその課題を本当に解決するサポートをしようとしているのでしょうか。

 今回のわれわれの事例はほんの一企業の事例にすぎないかもしれません。しかし、私が前職のヤクルト本社広告部長時代に感じていたことは、その後会社を離れ、様々な会社のお手伝いを通じて広告会社の対応を見た時に感じたこととほぼ一緒でした。

 あまりに顧客の課題との向き合い方が不十分な感じがしましたね。ひどい例では、クライアント企業の知識のなさに付け込んだ騙しとしか思えないようなものもありました。もちろん、クライアント企業の課題に真摯の向き合っている広告会社もあると思いますが、これはひどいなというもののほうが目につきました。それは、顧客よりも今までのビジネスモデルを守るということだけに考えがいってしまっているからではないでしょうか。

 

われわれは、クライアント企業とその顧客に真摯に向き合い、その間に生じているコミュニケーションギャップをクリアにし、ギャップの解消方法を提案したわけです。だから、クライアント企業もわれわれを信頼し、自社の課題と解決策をよくわかっているわれわれにすべてを任せたいということになったわけです。

 

 「広告業の社会的役割は何か」ということをもう一度問い直す必要がありますね。広告業は本来情報流通業であるはずです。社会の情報流通を円滑に循環させる役割であるはずです。いくらインターネットの発達によって消費者と商品・サービス提供者が直接結びつくようになったとしても、それだけで情報流通がうまくいくわけがありません。適切な情報加工をし、情報を消費者に分かりやすい形にするとともに、対象となる消費者によく伝わる媒体を選択または開発し、消費者と商品・サービス提供者との情報をスムーズに流通させていくことが必要です。

 しかしそれは簡単ではありません。商品・サービス提供者も独りよがりになりがちですし、消費者の方も自分の欲しいものが本当にわかっているわけではないからです。この前提に立って、そうならないように、消費者と商品・サービス提供者のギャップを埋めていくのが、情報流通業としての広告業の役割ではないでしょうか。

 

 いまのままですと、ビモクリがすべての顧客をいただくことになってしまいますよ。広告業の皆様、それでもいいですか。(ハハハ・・・、大きく出たね)