週刊 企業と広告 誌上マーケティング講座

反射的・習慣的に考えてしまう

2015.05.08
「空飛ぶペンギン」のマーケティング講座
第15回

「どんな企業も陥りがちな罠」についてお話しています。今回は、「反射的・習慣的に考えてしまう」です。これも今までの罠と同様に無意識に陥りがちなことです。

 

「高度成長期の遺物?」

 

 顧客企業の皆様やビモクリのセミナーにいらっしゃった方などいろいろな方とお話しする機会は多いのですが、マーケティング戦略を考える方に共通する無意識的な反射的・習慣的思考癖があります。それは、常に「新規顧客・若い年代層」をターゲットにしたがるということです。言っては何ですが、これは高度成長期の遺物的な思考方法に他ならないと思います。高度成長期の先輩世代の思考癖を無意識に受け継いでしまっているのではないでしょうか。

 

 最近になって生まれた新しいカテゴリーならそれも正しいと思います。ところがほとんどの商品は歴史あるカテゴリーであるはずです。マスコミ等は新しいものばかりを追いかけて取り上げるので、新しいものが世の中の主流になっているように錯覚しますが、実際には世の中の主流は依然オールドエコノミ―商品が占めているのです。 

 

 冷静に考えても、今の若年層は決して有望な市場ではありません。市場規模は団塊の世代の半分以下(団塊の世代である65歳の人口が221万人に対して、25歳は130万人程度)で市場規模が小さいのです。
 市場規模が小さいのに加えて、ニーズは均一ではなく、マスが狙いにくい多セグメント化した層で、可処分所得も低く、将来の所得向上の見通しも見えないので消費意欲は低い。その上情報を到達させるためのコミュニケーションチャネルも4マスだけでは難しく、インターネット・SNSなど多様化・複雑化しているので、情報を伝えにくいのです。にもかかわらず、新規顧客で若い層を狙いたいという企業が多いのです。

 

「データを見誤るな」

 

 シニア層に強い企業が、「新規顧客・若い層」を取りたいとおっしゃるのですが、確かにデータをみればその企業のシニア層の浸透率(購入率)は高く、若い年代層の浸透率は低い。そういうデータを概観すれば、弱いところの若い年代層を取りに行きたくなる気持ちもわからないではないです。これがじつは第12回でお話した「市場を概観してしまう」ことによる罠なのです。

 

 浸透率データとは、平面的なデータなので、一人当たりの購入金額という要素を加えないと深さがわからないのです。深さの要素を入れてみると、実際は浸透率の差以上に差は大きく数倍以上になることが多いのです。

 

「得意領域を取り切れ」

 

 高い浸透率を取っているから、シニア層はもう大丈夫というわけではないのです。まだまだ取り切っていないことが多いのです。面(浸透率)は取れているように見えても、深さ(一人当たりの購入金額)が十分取り切れていないケースも多いですし、顧客のフォローが十分ではなく顧客継続率が低いというケースも多いです。つまり十分にやりきっていないわけです。まず得意な領域の得意な顧客をもっと深く掘り下げ、取り切るべきなのです。得意な相手は相手のことがよくわかっていて慣れているので、慣れていない若年層と比べて圧倒的に成果が上げやすいのです。

 

 若年層をやるな、シニア層をやれというお話ではありません。反射的・習慣的な思考癖の罠に陥っていないかどうかが大事なのです。罠に陥っていず、得意領域をやりきっていれば、新しい顧客層へのアプローチは当然すべきなのです。

 

 しかしこのような罠に陥っている企業は実に多いのです。あなたのところも同じような罠に陥っていませんか。振り返ってお考えになってみることをお勧めします。