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誌上マーケティング講座

週刊「企業と広告」

  • 「空飛ぶペンギン」のマーケティング講座 第26回
  • 2016年03月28日

顧客に決めてもらえ


 前回は、ヘビーユーザーリサーチの中で活用する「拡張メソッド」についてお話しました。 今回もこの内容をより深くお話しましょう。





 このフレームは、リサーチの聞き方のステップであり、かつ差別的優位性を探索し、抽出するフレームでもあります。そして、狭くなりがちな視野を拡張するものです。

 顧客の意思決定過程のステップを区分し、どのステップに焦点を当てるか決めることは最も重要なマーケティングコミュニケーション上の戦略的な意思決定でもあります。

 セミナーに来られたある食品メーカーの広告部長は、このフレームをよく使わせてもらっていますとおっしゃっていました。部下の今やっていることはどのレベルなのかをこのフレームを使って部下と確認すると言われてましたね。


【自分で絞るな】


  ただこれを自分だけで判断してはなりません。私の顧客企業も含めて多くの企業の問題点は、ふたつです。

1.視野が狭いので、仮説の幅が狭い
2.自分の思い込みで、仮説を絞ってしまう
 

 いろいろな企業のリサーチの報告書をみると、調査対象者に最終的に提示するコミュニケーションの案は絞り込まれたひとつかふたつしかないというケースがほとんどです。
 これではおそらく意思決定の6ステップにある様々な可能性の追求はされていないでしょうし、同じステップの中での可能性も幅広く探っていないという状態ではないでしょうか。

 視野が狭くならないように、この6ステップに従ってリサーチの聞き方(インタビューフロー)を組み立て、ステップ毎のヘビーユーザーの意識を探り、それぞれのステップにおける自社の差別的優位性の仮説を抽出することが、ヘビーユーザーリサーチのポイントなのです。

 それをしないで、視野の狭い範囲のままで仮説を探り、それをリサーチで検証せずに、自分達だけで勝手に絞ってしまう。これがコミュニケーションがうまくいかない理由なのです。


【顧客に決めてもらえよ】


 前職のヤクルト本社の広告部長時代、部下がコミュニケーションの案を持ってきたとき、私は常にこう言っていました。

「僕は決めないよ。顧客に決めてもらえよ。」

 ターゲットでもない、50代のおやじが決める内容ではないからです。仮にターゲットが50代のおやじだったとしても、自分では決めません。なぜならすでに私はその企業の専門家としてヤクルトにどっぷり浸かっているので、一般のユーザーとは意識が大きく違うからです。

 この講座で何度も申し上げていることですが、長年企業に所属し、どっぷり浸かっていると、一般の顧客の意識とのギャップは非常に大きくなっているものなのです。それをわかってリサーチをちゃんと実施している企業もありますが、やり方がまずいケースが多いのです。 その要因は、先に上げたふたつのことです。

 顧客の意思決定ステップにしたがって幅広く差別的優位性を探り、それを自分達で勝手に絞らず、顧客にリサーチをして絞っていく。それを繰り返してブラッシュアップをする。これがコミュニケーションの成功確率を上げる方法なのです。