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誌上マーケティング講座

週刊「企業と広告」

  • 「空飛ぶペンギン」のマーケティング講座 第33回
  • 2016年11月28日

本当に消費者主導市場か


 ここのところ、顧客企業の戦略立案のためのグループインタビュー調査が立続けに入っていました。その中で、改めて消費者の潜在的な欲求がよく見えてきました。

 インターネットの普及によって、消費者からの情報発信ができるようになるとともに、メディアが4マス媒体しかなく、大企業だけが情報発信を独占していた時代は終わり、小企業でも情報発信ができるようになりました。

 その結果、情報の主導権は、消費者に移ったと言われるようになりました。消費者が自由に情報に大量の情報にアクセスでき、その情報に基づいて、より適切な選択するようになったということのようです。

 これは本当でしょうか。 一年中消費者リサーチをして、消費者の声を無意識の領域まで探っている私の実感はまったく違います。

 消費者はむしろ情報洪水の中で、溺れている。

というのが私の実感です。沢山の情報があっても、あまりに沢山すぎて、どうしていいかわからなくなっているのです。
 消費者は情報が沢山あったからといって、どの情報が正しいかの判断基準を持てるわけがないからです。したがって、自分の判断が正しかったのかという不安が常に根本にあるのです。

 この不安が根本にあるとどうなるか。それはその不安な状態から逃れるために、究極的には何かにすべてを委ねてしまいたいという気持ちになるのです。

 例えば、判断基準を与えてくれるランキングに頼るということもその表れです。ランキングが流行るのもそうした依存したいという潜在的な欲求から来ているのです。飲料のような低関与商品の場合はそのような状態がやや見えづらいのですが、エステのような高関与商品の場合はそれが顕著に見えてきます。しかし、本質的には一緒なのです。

 エステのヘビーユーザーにリサーチをした時のことです。そのエステは4つのコースがあるのですが、リサーチの対象者であるヘビーユーザーにパンフレットを示して

「どのコースを選ばれていますか」

と聞いたところ、

「よくわからない。」

というのです。

どういうことかと聞くと、

「担当の方にすべてお任せしているから」

と答えました。自分のコースが全く分かっていなかったのです。それも一人のユーザーの話ではなく、ほぼ全員がそうだったのです。

 これはクライアントにとっては衝撃でした。 情報洪水の中で疲れ切った消費者は、よく自分のことを解かってくれて、専門知識のある方にすべて判断を委ねてしまっていたのです。

 これは、エステという商品特性の問題のように感じるかもしれませんが、エステという高関与商品だから、顕在化しやすいだけです。実は究極的な顧客の潜在欲求の表われなのです。他のカテゴリーの商品のリサーチをしていても、根本は一緒でした。そうした状況の中でどのような情報を伝えていけばよいのでしょうか。

 単に広告で短い商品のコンセプトを伝えるだけでは、消費者の心は動かないのです。必要なことは、商品よりも企業としての信頼度です。 顧客の抱えているそのような潜在欲求を深く理解をし、その上でそれを解決できる企業であることを、企業哲学・理念や商品開発の考え方、そしてその裏付けとして歴史やエピソードと実績や実際の数字などで伝えなければならないのです。

 これは様々な企業のコミュニケーション戦略のためのリサーチをしている中で証明されている事実です。これこそが現代の情報洪水の中でどうしていいかわからず、不安に駆られ、不安から逃れるために、依存したい消費者を導いていくために必要な情報なのです。

 皆様も一度深く考えてみてはいかがでしょうか。